医学会誌 第40巻 補遺号
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25基-82:ナノスケール新素材の免疫毒性研究代表者:西村 泰光(衛生学) 近年、カーボンナノチューブ(CNT)やナノシリカなどの利用が高まりつつあるが、一方でナノスケール新素材の毒性が指摘されている。本研究では、末梢血単核球(PBMC)を用いてチタン酸ナノシート(TNS)の毒性影響を調べた。PBMCまたは分取したCD14+単球またはCD4+Th細胞をTNSまたは石綿クリソタイルB(CB)曝露下で培養した。TNSのナノシート構造は、TEMでの観察、XRD・ラマンスペクトルの解析で確認された。PBMC培養2日後には、CB曝露濃度依存的にannexin V陽性、propidium iodide陰性(Anx+PI-)のアポトーシス細胞が増加したが、TNS曝露時には見られなかった。7日後にはTNS曝露時にもAnx+PI-細胞の増加が見られ、濃度依存性はCBと同程度であった。単球の培養時にも、CB曝露下では2日後にAnx+PI-細胞およびAnx+PI+細胞が増加し、TNS曝露下では7日後に両アポトーシス細胞の増加が見られた。また、TNS曝露下では空胞を持つ細胞が培養1日後から現れ始め、時間経過と共に空胞は巨大化した。Th細胞培養時には、CB、TNS曝露下共に7日後にAnx+PI+細胞が増加した。以上の結果から、TNSは石綿と同程度の用量反応性でアポトーシスを引き起こすが、時間依存性が異なり、特徴的な細胞形態の変化を示すことが分かった。25基-41: CXCR3及びCCR7に注目したエフェクター/メモリーCTL機能に関する石綿曝露影響の解析研究代表者:武井 直子(衛生学) 石綿の発癌作用はよく知られているが、癌疾患の抑制に働く抗腫瘍免疫への石綿曝露影響は不明な部分が多い。腫瘍細胞が効果的に排除されるためには、CTLの分化だけでなく、分化後のエフェクター/メモリーCTL亜集団の機能持続と遊走が適切であることが重要である。申請者はこれまでに石綿曝露によるヒトCTL分化抑制を見出した(Am J Respir Cell Mol Biol, vol 49 (1), p28-36, 2013)。本研究では、CTLの機能維持や遊走活性への石綿曝露影響を調べることに先立ち、ヒトのCD8陽性T細胞株であるEBT-8細胞を用い、ケモカイン受容体CXCR3やCCR7の発現の有無を調べるとともに、EBT-8の細胞増殖に影響を与えない石綿曝露濃度を検討した。フローサイトメトリー解析によって、EBT-8細胞がCXCR3とCCR7を発現することがわかった。終濃度0、1、5、10、20、50、100 μg/mlになるように白石綿(chrysotile B)添加培地を加え、2日間培養した後、WST-1を添加し、4時間後に多機能マイクロプレートリーダーで吸光度を測定した。石綿の濃度が50 μg/mlを超えると吸光度の減少が顕著であった。現在、EBT-8細胞の増殖に影響を与えない5 μg/mlの石綿曝露濃度を用いて石綿曝露株を作成し、CTLの機能に関する石綿曝露影響について調べることに引き続き取り組んでいる。S59

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