医学会誌 第40巻 補遺号
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25基-3:長期モニターによるマイナス帯電粒子優位室内環境の生体影響の観察研究代表者:大槻 剛巳(衛生学) 木炭塗料とともに壁面と天井面に電圧を負荷することにより室内環境中のプラス帯電粒子を負荷面に吸着することによりマイナス帯電粒子を継続的に優位にする室内環境について,その生体影響を検討している。これまで2.5時間滞在,2週間夜間滞在試験を行い,短期のIL-2の上昇に加えて,中期ではNK細胞活性の亢進が観察され,現在,3ヶ月の居住による変化を長期モニター被験者で検討中である。被験者は,現在8名。予定では2年間にわたって,本仕様を管理箱によりON/OFFに変更可能であるので,3ヶ月周期でのON/OFFの繰り返しをお願いし,変更直前の3ヶ月ごとの採血をお願いしている。NK活性については,計8名で開始からONの3ヶ月あるいはOFF3ヶ月の後のON3ヶ月という本仕様を使用した測定が,計10回実施され,NK活性の①増加率は平均±標準偏差が157.2±78.9%であり,②増加が7回(190.0±71.6%),③低下3回(80.7±8.6%)であった。ONからOFFでの3ヶ月の実施は,計5回測定できているが,④変化率は81.1±87.9%であった。ただし,1例,前立腺がんの治療経過中にエントリーされた症例があり,その症例では3回目のONからが研究対象と考えているため,その例を除くと,それぞれ①165.3±79.2,②190.0±71.6%,③78.5±10.9%,④45.0±29.4%であった。それぞれの,モニター被験者が2年(4回のONと4回のOFF)を終了してから解析に入る予定であるが,現状では長期居住でも十分にNK活性の亢進が認められている。25ス-5: ナノシート構造を有する機能性ペロブスカイト型化合物の液相における合成およびそれらの評価研究代表者:吉岡 大輔(自然科学) 液相合成したチタン酸ナノシート(TNS)を前駆体として,アルカリ金属(Li,Na,K)およびアルカリ土類金属(Ca,Sr,Ba)のチタン酸塩について水熱合成を試みた。透過型電子顕微鏡(TEM),X線回折(XRD),ラマン分光法を用いて,生成物のナノ構造,結晶構造の変化について系統的に検討した。 TNS溶液と金属イオン(水酸化物または硝酸塩)を含む溶液を混合し,150℃1時間の水熱処理を行った。処理後の懸濁液および洗浄・乾燥後の粉末を試料として評価した。懸濁液をTEMで観察したところ,実験に用いた全ての金属イオンとの反応において,水熱処理を行う前後でのナノ構造の変化がみられた。アルカリ金属との反応では,形状は菱形から短冊やチューブ状に変化していた。また,XRDおよびラマン分光からは,これらの塩は層状構造を維持し,層間距離が拡がっていることが分かった。アルカリ土類金属との反応では,CaとBa塩ではチューブ状の凝集物が,Sr塩では正方形の凝集物が得られた。いずれも,層状構造の継承は見られなかった。XRDからは,Sr2+との反応生成物がペロブスカイト型チタン酸ストロンチウムであり,他の組み合わせでは見られなかった唯一の結晶性の生成物であることが分かった。また,このチタン酸ストロンチウムは光触媒性能を有している。 ペロブスカイト型構造およびナノシート構造をともに有する新規機能性材料の合成はできなかったが,TNSとSr2+との反応はほかのイオンに比べて特異的であることが分かった。― 環境と生体反応 ―S58川 崎 医 学 会 誌

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