医学会誌 第40巻 補遺号
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25基-33:手術手技が血中循環腫瘍細胞に及ぼす影響に関する研究研究代表者:中田 昌男(呼吸器外科学)【目的】従来より癌患者の末梢血中に循環腫瘍細胞(CTC)が検出されることが報告されているが、外科的治療とCTCに関する研究は少ない。すべての外科的治療は侵襲を伴うため、その操作によって機械的に癌の原発巣から腫瘍細胞が遊離し循環血液内に播種する危険性が存在する。本研究は、原発性肺癌患者の手術前後のCTCを測定し、手術手技がCTCに及ぼす影響を検討することを目的とした。【対象と方法】川崎医科大学附属病院において非小細胞肺癌の根治目的で肺切除術を行う患者を対象とし、肺切除前と術直後の末梢血ならびに摘出後の肺葉標本から血液を採取しCTCを測定する。【結果】2013年10月までに5例の患者で測定を行った。いずれも肺腺癌で、平均腫瘍径は3.2cm、リンパ節転移は認めず、肺葉切除術にて完全切除を行うことができた。この5例においては、どの時点の血液検体からもCTCは検出されなかった。【考察】過去の非小細胞肺癌のCTCに関する研究では、治療前の血液中のCTC陽性率は10%以下である。今後、10症例を目標に症例を蓄積し、できれば組織型・病期・手術術式などとの関連性について検討していきたい。25基-77:新しい細胞動態解析方法を用いて癌細胞転移を制御する分子を見出す研究代表者:山内 明(生化学)【目的】癌転移の初期段階に起こる癌細胞遊走能活性化の機序を明らかにし、転移能抑制のための新たな分子を見出す。【方法】細胞動態解析装置TAXIScanを用いて、膵癌細胞株BxPC3およびPANC1細胞の走化性を惹起する種々の走化性刺激物質を探索した。さらにこの走化性刺激物質にて刺激後の細胞内シグナルの状態を受容体チロシンキナーゼに対する抗リン酸化タンパク質抗体を用いて検討した。リン酸化が起こっている分子に注目し、リン酸化を抑制およびsiRNAでノックダウンした時の細胞走化性を検討し、転移抑制の可能性を検討した。【結果】走化性刺激物質として、ウシ胎児血清が膵癌細胞の良好な遊走を惹起した。さらに成分を検索したところ、脂質メディエータのリゾフォスファチジン酸(LPA)が強い遊走惹起性を有することが分かった。LPA刺激後の細胞内タンパク質のリン酸化状態を検討したところ、調べた範囲では、EGFR、FGFR1、ALK、EphA2、Akt、p44/42MAPK、Srcなどのリン酸化が亢進していることが分かった。そのうちEphA2に注目し、発現抑制を試みるためsiRNAを構築した。現在、EphA2発現を抑制した膵癌細胞株で走化性抑制が起こるかどうか検討中である。【考察】上記リン酸化タンパク質のリン酸化あるいは発現の抑制により、癌細胞走化性抑制が実現できるかもしれない。S54川 崎 医 学 会 誌

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