医学会誌 第40巻 補遺号
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25挑-8:急性期脳卒中患者における悪性腫瘍合併検索についての前向き研究研究代表者:小林 和人(脳卒中医学) 本邦における平成20年の年間死亡数は114 万2467 人であり、悪性新生物は 30.0%、脳血管疾患は 11.1%を占めている。脳梗塞の発症には悪性腫瘍が関与することがあり、悪性腫瘍が様々な部位に血栓症を生じる病態はTrousseau 症候群として知られている。 腫瘍に関連した脳梗塞発生の機序は、① 悪性腫瘍の発生により過凝固の状態になるために、頭蓋内血管に血栓を形成し血管閉塞を引き起こす。② 同様に過凝固の状態であるために深部静脈に血栓が形成され動静脈シャントを介して頭蓋内血管を閉塞する③ 腫瘍により非細菌性血栓性心内膜炎を引き起こし塞栓物質となり脳血管を閉塞し、梗塞を発症する。④ 悪性腫瘍に対する化学療法や放射線療法の影響により脳梗塞を発症すると考えられている。 本研究の目的は、急性期脳梗塞患者に対し造影CT検査、採血検査、便潜血検査を行い、悪性腫瘍検索し、悪性腫瘍合併率を調査することである。 本研究は研究途中であり、過去に我々が行った発表を交えプロトコルを発表する。25基-9:インスリン抵抗性宿主における大腸発がん過程でのTIGARの役割研究代表者:鶴田 淳(消化器外科学)(背景)大規模な疫学調査から内蔵脂肪の蓄積や脂肪組織の増加に伴うインスリン抵抗性と発がんとの関係性が着目され、p53がkey regulatorとして 細胞内代謝調節に大きく関与することが明らかになってきている。p53下流のTIGARは高発現により解糖系を阻害し糖新生の方向へシグナルを変更する。近年、ラットを用いたアルコール性肝障害モデルにおいて、TIGAR発現によりフルクトース-2,6-ビスリン酸のレベルが低下し、乳酸/ピルビン酸比が低下することでグルコースの代謝回転が増強されインスリン抵抗性につながると報告されている。(目的)インスリン抵抗性-大腸発がん経路におけるTIGARの役割を検証する。(方法)ICRマウス(5週齢、雄)に8週間高脂肪食を恒常的に加えインスリン抵抗性を形成する。5週齢目にazoxymethane (AOM)10mg/kgを腹腔内投与(不投与群も設定:UCモデル)し6-7週齢目に2%dextran sulfate sodium (DSS) 含有水を1週間投与し20週齢目に解剖する。大腸発がんモデルおよびUCモデルでの炎症の増悪化もしくは腫瘍形成の有無を検索し、大腸組織のp53, TIGAR発現を解析する。2型糖尿病モデルマウスKK-Ay(6週齢、雌)にAOM投与する系も設定する。(結果)現在は予備実験として通常飼料飼育でのマウス大腸化学発がんモデル実験を施行中である。― がん(消化管粘膜含む) ―S48川 崎 医 学 会 誌

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