医学会誌 第40巻 補遺号
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25基-70: 糖尿病モデルマウスにおけるHMGCoA還元酵素阻害薬(スタチン)のアルブミン抑制効果とその機序の検討:転写因子Nrf-2活性化の関与研究代表者:藤本 壮八(腎臓・高血圧内科学)【背景】スタチンは脂質低下作用だけでなく、抗酸化作用を有し、アルブミン尿減少、腎機能保持などの腎保護効果を有する。しかし、その分子機序は十分に解明されていない。核内転写因子Nrf2は酸化ストレスに応答して抗酸化酵素群の発現を統合的に制御している。スタチンがNrf2活性化による内皮保護作用を介して腎保護効果を発揮するとの仮説を立て、これを検証した。【方法】(1) 糖尿病モデルであるAkitaマウス (Akita) にスタチンを投与 (statin群) し腎保護作用を検討した。(2)ヒト臍帯静脈内皮細胞 (HUVEC) を用いて、スタチンによるNrf2活性化の分子機序を解析した。【結果】(1) Akita群に比較しstatin群では尿中アルブミン排泄量が有意に減少した。(2) HUVECへのスタチン添加によりAntioxidant-Response Element転写活性の上昇、Nrf2関連遺伝子の発現増加を認めた。スタチンはNrf2蛋白の半減期を延長させた。また、スタチンはp21cip1蛋白発現を増加させた。p21cip1 siRNAによりp21cip1発現を抑制すると、スタチンによるNrf2安定化作用が消失した。従って、スタチンにより誘導されたp21cip1がNrf2と結合し、蛋白分解抑制を介してNrf2の活性化に寄与していると考えられた。【結論】スタチンはp21cip1発現増加を介してNrf2経路を活性化させ、抗酸化能を増強し腎保護作用を発揮した。25基-25: NASH(Non-alcholic steatohepatitis)/NAFLD(Non-alcholic fatty liver disease)におけるアミノ酸分析(アミノ酸41種)のインバランスとNASH/NAFLDの病態との関連研究代表者:川中 美和(総合内科学2)【目的】近年、正常血糖者のアミノ酸の異常値や変化がのちの耐糖能異常を予測できるという報告が散見され、アミノ酸異常とインスリン抵抗性は深い関連があることが推察される。今回、糖尿病のないNAFLDにおけるBCAA、Try:、BCAA/Try比(BTR)の測定およびアミノ酸41種の測定を行い、インスリン抵抗性との関係を検討した。【方法】肝生検を施行したNAFLD 137例を対象とし、血漿BCAA、Try 、BTRの測定を行い、HOMA-IR、フェリチン、レプチン、アディポネクチン、高感度CRP、肝線維化との関連の検討を行った。また、NAFLD 37例を対象とし、アミノ酸41種の測定を行い、それらとインスリン抵抗性と75gOGTTとの検討を行った。【結果】血漿BCAAは線維化の進展とともに低下し、アディポネクチンと、TyrはHOMA-IRと肝線維化と有意な関連を認めていた。アミノ酸41種の検討ではHOMA-IR2.4以上は2.4未満に比べ、セリン(Ser)、アスパラギン酸(Asp)、α-アミノ-n-酪酸(AABA)が有意に低く、Ile、Tyr、β-アラニン(βAla)、モノエタノールアミン(MEA)が有意に高かった。OGTTにてIGF,IGTは正常型に比べAABAが有意に低かった。【考察】NAFLDにおけるIle、Tyr上昇などのアミノ酸異常はインスリン抵抗性と関連がある。これらの異常は将来の糖尿病発症に関連がある可能性があり、今後の経過観察が重要と考えられた。S46川 崎 医 学 会 誌

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