医学会誌 第40巻 補遺号
49/92

25基-63:可視化による腎微小循環制御におけるCa作用機序の解明研究代表者:仲本 博(医用工学) 腎血流量は、オートレギュレーションにより一定の領域に維持されている。その機序の一つが、尿細管糸球体フィードバックである。これまで、腎糸球体の生体内での研究は、われわれの研究室を含めてそう多くはない。傍糸球体装置は、輸入細動脈に接しており、尿細管糸球体フィードバックが、その収縮制御に関わっていることが知られている。本研究の目的は、尿細管糸球体フィードバックにおける細胞内Caの関与を可視化することである。 我々は、自発呼吸下の吸入麻酔Wistarラット(n=8)に、CaプローブであるFluo-4と血漿を描出するためのTexas Redで標識したアルブミンと細胞核を描出するためのHoechst33342を前投与し、腎を剖出し、共焦点顕微鏡(Nikon A1R MP)で腎糸球体微小循環を可視化した。外部から腎組織へ、尿細管糸球体フィードバックの強力な活性化作用を示す高濃度である25%食塩水を持続投与( 0.1 ml/kg/min )した場合と、コントロールとして生理的食塩水(0.9%)を持続投与した場合の、傍糸球体装置付近のFluo-4の輝度を経時的に測定し、比較検討した。 高濃度食塩水により傍糸球体装置付近のCa濃度は上昇したが、生理的食塩水ではそのような変化は見られなかった(p<0.05)。 われわれは、尿細管糸球体フィードバックに関わるCaの関与を可視化することが出来た。25基-91:糖尿病性腎症病態形成におけるカルパイン活性化及びクロトー遺伝子の役割の解明研究代表者:春名 克祐(腎臓・高血圧内科学)【背景】高糖濃度刺激は内皮カルパイン活性を増加させ、内皮の一酸化窒素産生低下を介しアルブミン尿出現に関与する。Klotho (KL) mutantマウスではカルパイン活性が上昇しており、KLにはカルパイン活性抑制作用があることが予測される。今回、「KLはカルパイン活性化を抑制し、糖尿病性腎症に伴うアルブミン尿を減少させる」との仮説を立て、検討した。【方法】ヒト糸球体内皮細胞 (hGEnC) を分泌型KL存在下もしくは非存在下で30 mM D-Glucose刺激を行い、細胞のカルパイン活性を測定した。自然発症インスリン分泌不全型糖尿病モデルであるAkitaマウス (Akita) とKL過剰発現マウス (KLTG) を交配し実験に用いた。WT、Akita、KLTG、Akita/KLTG 群を準備し、20週齢でのアルブミン尿、腎組織、腎カルパイン活性を比較検討した。【結果】(1) hGEnCへの高糖濃度刺激は、カルパイン活性を上昇させた。KL上清添加によりこの活性上昇は抑制された。(2) Akitaは20週齢でWTに比較し、有意なアルブミン尿が出現した。Akita/KLTG群では有意に抑制された。糸球体内PAS陽性面積もAkita/KLTG群ではAkita群に比較し有意に抑制された。【結論】KLはカルパイン活性化を抑制し、糖尿病によるアルブミン尿を抑制する。Recombinant分泌型KLが使用可能であれば、糖尿病性腎症治療に対してKL補充療法が有効と考えられる。S45

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です