医学会誌 第40巻 補遺号
46/92

25基-73:肺虚血再潅流傷害の新規制御法の確立研究代表者:花崎 元彦(麻酔・集中治療医学3)<目的>肺移植術後管理において大きな問題は虚血再潅流傷害であり、さらに気道過敏性亢進を示す症例も散見されるが、これらはいずれも機序不明である。近年、低分子量G蛋白RhoAとその下流のシグナル分子Rho-kinase (ROCK)が腎や心の虚血再潅流傷害に関与することが示された。また気道過敏性については、我々が以前よりRhoA—ROCK系や内因性のミオシン軽鎖ホスファターゼ阻害蛋白質CPI-17が平滑筋収縮に重要な役割を果たしていることを示してきた。今回、ラット肺虚血再潅流傷害へのRhoA、CPI-17の関与について調べた。<方法>雄性 Wistar ラットを2群(対照群、虚血再潅流(I/R)群)に分けた。 セボフルランで麻酔し胸骨正中切開で左肺門部をクランプし1時間虚血、クランプ解除(再潅流)1時間後に左肺を摘出しWestern blot法を用いて解析を行った。<結果>対照群と比較し、I/R群でRhoAタンパク質発現レベルおよびCPI-17タンパク質発現レベルともに増加が認められた。<結論>ラット肺虚血再潅流傷害時にRhoA-ROCK系およびCPI-17を介するシグナル伝達が亢進している可能性が示された。またRhoAおよびCPI-17は平滑筋収縮時のCa2+ sensitizersであることから、これらシグナル分子の発現増加が肺移植時の気道過敏性発現に関与している可能性が示唆された。25基-71: 岡山県下における透析導入患者のコホート構築と心血管イベント、バスキュラーアクセス不全の前向き観察研究研究代表者:堀家 英之(腎臓・高血圧内科学) 本邦における維持透析患者数は30万人を超え、その数は年々増加の一途をたどっている。しかし、維持透析患者の死亡原因の約4割が心血管イベントによるものである。そのため、維持透析導入早期の心血管イベント発症を詳細に調査することにより、その実態を把握し、透析患者の治療に資することが期待される。 岡山県内においては、現在4,546名の維持透析患者がおり、新規導入は年間500名以上である。しかしながらこれまで詳細な調査が行われたことはなかった。 本研究の目的は、岡山県内の25施設で新規に透析導入を行った患者を追跡調査することにより、維持血液透析導入前の腎不全保存期および導入時における管理状況と、導入早期における死亡、心血管イベント、バスキュラーアクセス不全発症との関連について検討することである。また、維持透析患者の重要な問題として、バスキュラーアクセスの管理が挙げられ、バスキュラーアクセスの長期開存、良好な透析効率が維持透析患者の生命予後にも関連するとの報告もある。本研究により得られた知見を、腎不全保存期および血液透析導入時の管理に反映させることができれば、維持血液透析期における予後改善につながるものと期待される。今回追跡調査開始後1年の経過報告を行う。S42川 崎 医 学 会 誌

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です