医学会誌 第40巻 補遺号
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25基-50:脈波伝播速度と新規血管内皮機能検査を用いた革新的脳血管疾患診療の開発研究代表者:佐治 直樹(脳卒中医学) 本研究の目的は、ラクナ梗塞や白質病変などの無症候性脳病変や、脳血管障害の病態について、血圧脈波検査を用いて血管障害の観点から検討することである。 平成24年4月から平成26年3月までの2年間で、当科には1143人の脳血管障害患者が入院した。そのうち急性期の脳梗塞患者数は821人であり、624人(76%)に血圧脈波検査を実施した。 脳梗塞の主な臨床病型には、ラクナ梗塞、アテローム血栓性梗塞、心原性脳塞栓症があるが、それぞれの病型における動脈硬化の病態は異なっている。ラクナ梗塞の主な機序は細動脈硬化であり、アテローム血栓性梗塞の主な機序は大血管粥状硬化症である。また、血管内皮障害の機序も、ラクナ梗塞とアテローム血栓性梗塞では異なっていると考えられている。動脈硬化の判定指標としての血圧脈波検査や新規の血管内皮機能検査を用いて、脳梗塞における動脈硬化の病態が明らかになるものと期待している。 現在、脳卒中患者の登録を継続して行っており、引き続き臨床的意義の解明にむけて努力していきたい。25基-84:脳梗塞急性期における造影CT検査の有用性:経食道心エコーとの比較研究代表者:岩永 健(脳卒中医学) 大動脈弓部複合粥腫は脳梗塞の原因となるが経食道心エコーで診断されている。造影CT検査において同定できるか本研究を行った。85名の患者(男59名,平均年齢68.1歳)を対象として後ろ向き調査を行った。 方法としては①両検査における大動脈壁の肥厚の測定結果の一致率、②複合粥腫の診断一致率を調査した。なお、複合粥腫の定義は経食道心エコーでは4mm以上の壁肥厚、潰瘍、可動性プラークとし、造影CT検査では4mm以上の壁肥厚、潰瘍とした。 結果としては①大動脈壁の肥厚はPearsonの相関係数がr=0.789、p<0.001とよく相関していた。②複合粥腫に関しては造影CTでは感度83%,特異度71%,χ2検定p<0.001と診断することができた。 結論としては、造影CT検査は大動脈粥腫を同定できる有用な検査と考えられる。 前向きの調査として川崎医科大学の倫理委員会で12月に審査を通過した。3月までの期間に登録できた症例が少なく解析を行うことができない。研究代表者の退職に伴い前向き研究の継続は困難である。― 循環と代謝/メタボリックシンドローム ―S32川 崎 医 学 会 誌

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