医学会誌 第40巻 補遺号
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25基-51:Sindbis virusを用いたマウス嗅覚入力調節回路の解析研究代表者:清蔭 恵美(解剖学) 嗅球の投射ニューロンの一つである僧房細胞は、嗅球表層に在る糸球体内に一次樹状突起を伸ばし嗅細胞軸索からの情報を受け取る。この匂い情報は、糸球体を構成する介在ニューロンやもう一種の投射ニューロンである房飾細胞によってさらに調節を受けている。このように、糸球体内では僧房細胞と房飾細胞の2種類の投射ニューロンが入力処理を行っているが、これまでこれらを識別することができなかったため、入力調整回路の詳細については未だ明らかにされていない。そこで本研究では、単一の僧房細胞と房飾細胞を可視化させるため、tyrosine hydroxylase(TH)をgreen fluorescent proteinで検出した遺伝子改変マウス嗅球の僧房細胞層と外網状層表層にsindbis virusを注入する感染実験を行った。灌流固定後、スライスの蛍光多重染色を行い、レーザー顕微鏡下でTHニューロンと投射ニューロンが重なる箇所を確認した。さらに、THニューロンはDAB、投射ニューロンは金粒子で標識した免疫電顕標本を連続超薄し電顕撮影を行った。その結果、レーザー顕微鏡下で両ニューロンが重なった箇所には僧房細胞からTHニューロンへの興奮性シナプスが、さらにTHニューロンからは別の投射ニューロンへの抑制シナプスが連続して観察された。現在、光顕と電顕レベルの観察を対応させながら詳細な入力調節回路の解析を進めている。25基-53:電子顕微鏡連続切片法による嗅球深層神経回路の解析研究代表者:野津 英司(解剖学) 嗅粘膜に存在する嗅細胞は、発現する嗅覚受容体に依存して嗅球の異なる糸球体へ軸索を伸ばし、投射ニューロンである僧帽細胞(MC)に特定の匂い情報を集束することにより、匂い情報を空間的な位置情報へ置き換えていると考えられている。その位置情報は、MCの興奮としてより高次の中枢へ出力されている。このMCの興奮は、嗅球内に存在する種々の介在ニューロンによる調節をうけるが、この介在ニューロンは単一のGABA系ニューロンではなく、様々な形態的、化学的特性を持つ多様な細胞群である。MCの一次受容突起が位置し、情報の入力に関わる嗅球浅層については、種々の介在ニューロンが関係する神経回路の解析が進んでいるが、MCの細胞体が位置し、情報の出力に関わる嗅球深層についての解析はあまり進んでいない。本研究は、これまで行ってきたMCの細胞体周囲に分布するcalbindin(CB)ニューロンの形態およびシナプスの解析を進めたものであり、これまでの解析の結果、嗅球深層のCBニューロンが、MCに対する主要な抑制系ニューロンと考えられている顆粒細胞(GC)に対して、抑制性シナプスを形成し、GCを介した脱抑制機構が存在していることを電子顕微鏡連続切片法により明らかにし、同時にその手法を確立した。現在CBニューロンの軸索の投射領域の解析を行う為、sindbis virusを嗅球に注入し、単一CBニューロンの標識を行っている。S26川 崎 医 学 会 誌

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