医学会誌 第40巻 補遺号
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25基-49:プロセシング酵素PC6による幹細胞分化の時空間的な解析研究代表者:西松 伸一郎(分子生物学1(発生学))【目的】 PC6は、Furinファミリーに属するセリンプロテアーゼで、TGF-βなどのサイトカイン前駆体を切断し成熟型に変換する。PC6によるこの反応が、胚の幹細胞の増殖と分化を調節し、頭尾軸と背腹軸にそった形態形成を制御する可能性を発見し検証を行った。【方法】 PC6の酵素反応を時空間的に解析するためのFRETセンサーの開発を試みた。また初期胚由来の多能性幹細胞にBMPとPC6を発現させて細胞分化を誘導し、BMP前駆体のプロセシングと関連して変動する細胞内エフェクターの解析を行った。【結果・考察】 PC6の活性中心と会合するペプチド115アミノ酸を同定し、N末端側にシアン蛍光タンパク質(CFP)、C末端側に黄色蛍光タンパク質(EGFP)を連結しFRETセンサーを作製した。両生類胚由来の外植体およびマウス胚由来の培養細胞株を用いてセンサーが適切に反応するか機能評価を行っている。この過程で、BMP前駆体のプロセシングと連動する細胞内エフェクターを同定した。BMP前駆体がPC6により切断されると、転写因子であるOtx2からNkx2.5が発現することを明らかとしていたが、これらの転写因子の発現制御にBMPシグナルの細胞内エフェクターであるSmad7とSmad6が関与していることを見いだした。脊椎動物に普遍的な現象であるのか、マウス胚由来細胞株を用いて検討を加えている。25基-94:遺伝子修復とリプログラミングによる筋ジストロフィー再生医療の基盤研究研究代表者:大澤 裕(神経内科学) 胎児皮膚線維芽細胞(MEF)への3転写因子発現によって人工多能性幹(iPS)細胞が樹立され再生医療が新時代を迎えた。ところが“多能性リプログラミング”に起因する癌化や誤分化の課題は克服されていない。一方、一旦分化した体細胞を別の体細胞に直接リプログラミングする戦略も脚光を浴びているが、その機構は殆ど解明されていない。われわれは骨格筋再生を目指して、野生型及び筋分化のマスター転写因子のひとつであるAを欠損したマウスからそれぞれMEFを採取しマスター転写因子A,B及びCを導入し、筋細胞への直接リプログラミングが可否かについて検討した。野生型ばかりでなくA欠損マウスのMEFも、それぞれ単核の線維芽細胞から多核筋管細胞・筋線維様となりに収縮を始めた。この野生型線維芽細胞のリプログラミングでは、A, B, Cが、経過とともに発現した。またA欠損線維芽細胞の直接リプログラミングでは、B, Cが経過とともに発現した。細胞を野生型マウスに移植すると筋線維に取り込まれ一部は筋組織幹(衛星)細胞マーカーを発現した。すなわち線維芽細胞から筋細胞への直接リプログラミングではB, CがAより上流でこの機構を階層的に制御し筋組織幹細胞へ分化する。この直接リプログラミング戦略とヒト人工染色体を用いた遺伝子修復との組み合わせ治療に取り組んでいる。S24川 崎 医 学 会 誌

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