川崎医学会誌39-2
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24大-1: 発熱性好中球減少症における原因微生物のPCR法を用いた迅速検出と至適治療法に関する研究研究代表者:尾内 一信、寺西 英人(小児科学)【背景】悪性腫瘍に対し化学療法を受けている好中球減少時に発熱が生じた場合には、多彩な微生物により重篤な感染症を併発する可能性が高い。発熱性好中球減少症(FN)おいては血液培養を施行し、経験的抗菌療法を行う。しかし、血液培養は起因菌の同定までに時間がかかり、かつ検出率の低さが問題である。我々は血液検体から細菌、真菌、ウイルスを短時間に検出できるreal-time PCR法を用いた微生物検査システムを考案した。血液培養とReal-time PCRで原因微生物の検出率、速度に差がないか比較検討した。【対象】2012年6月から2013年4月までに発症した発熱性好中球減少症76例(小児62例、成人14例)。【方法】細菌の検出に16srRNAを、真菌の検出に18srRNAを標的としてprimerを作成した。ウイルスにはLAMP法を用いてCMV・VZV・HSV-1,2・EBV・HHV-6,7を検索し、陽性例に関してreal-time PCRを行った。また、mecA遺伝子とcarbapenemase遺伝子(blaIMP, blaVIM)の薬剤耐性遺伝子もPCR法で検索した。【結果】血液細菌培養陽性例は76例中9例(8.4%)に対し、real-time PCR陽性例76例中19例(25.0%)であった。6例で血液培養とreal-time PCRの検出菌が一致した。真菌は血液培養、real-time PCRともに検出されなかった。ウイルスは76例中6例(7.9%)に検出された。起因菌同定までに要した時間は、血液培養33時間58分36秒に対し、real-time PCRは8時間であった。【結語】real-time PCR法は従来の血液培養と比較して高い検出率を示し、かつ短時間に起因菌を同定することができた。real-time PCR法を用い迅速に起因菌を特定し、至適抗菌薬を選択することが可能になると考えられた。24大-3:エイコサペンタエン酸による制癌剤の抗腫瘍効果増強作用とその機序の解明研究代表者:中村 雅史、窪田 寿子(消化器外科学)【はじめに】エイコサペンタエン酸(EPA)はタンパク同化作用と抗炎症作用を有しており、またNF-kBを介しAktを抑制することで最終的に癌のアポトーシスを促進することが報告されている。われわれも高濃度EPAを含む経腸栄養剤を摂取することで腫瘍マーカーが減少しPSが改善した症例を経験した。そこで、食道癌細胞へEPAを作用させたときの増殖抑制、アポトーシスの誘導、NF-kBの核内移行を検証した。【方法】EPA1日2gを2週間摂取することにより血中EPA濃度は平均195μMから平均529μMへ上昇する。この血中濃度を参考にし、食道癌細胞TE-1細胞へEPAを添加し、WST-1を用いて細胞増殖能の検討、TE-1細胞の細胞膜構造変化、NF-kBの核内移行率を検出した。【結果】TE-1細胞の細胞増殖能はEPA500μMで有意に抑制された。免疫染色法においてでもEPA500μM添加群でアポトーシスへ誘導されていた細胞が有意に増加していた。またNF-kB核内移行率はEPA300μM添加により有意に抑制されていた。【結語】TE-1細胞へEPAを添加することによりNF-kBの核内移行が抑制され細胞増殖は有意に抑制され、アポトーシスが誘導された。以上よりEPAには癌細胞の増殖を抑制とアポトーシスへ誘導することが示唆された。そしてこれらはNF-kBの核内移行を抑制することで起こる可能性が示唆された。S67

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