川崎医学会誌39-2
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24基-3:乳腺浸潤性微小乳頭癌の特徴的な発現因子の解明研究代表者:鹿股 直樹(病理学2) 浸潤性微小乳頭癌はリンパ管侵襲の頻度、リンパ節転移の頻度が高いことが知られている。しかし、浸潤性微小乳頭癌の特徴的な形態がいかにして生じるか、また、リンパ管侵襲、リンパ節転移をきたしやすいのはなぜか、については解明されていない。これまでに我々は、混合型浸潤性微小乳頭癌症例から微小乳頭癌部分と、通常型の浸潤性乳管癌部とで、各々別々に組織を集めて、mRNAを抽出し3D-Gene DNAアレイチップ(25000 genes)で解析を施行した。この結果、浸潤性微小乳頭癌部分での発現が、通常型浸潤癌を3倍以上、上回っていた因子は、C21orf118(BC-1514)だけであった。また、浸潤性微小乳頭癌部分での発現が、通常型浸潤癌部分よりも1/3以下であったのは、SAMD13、CAMK2N1、TCF4、TNXIP、 RPL5、PJA2、CD1Dであることが判明した。これらのマーカーの発現を多くの臨床症例で免疫染色を施行するために、2008年以降に手術が施行された乳癌症例から、微小乳頭癌要素を含む症例を抽出した。この間には乳癌手術例が850例であり、腫瘍の一部にでも微小乳頭癌成分を含む症例は60例(7.1%)であった。pT1 34例、T2 18例、T3 6例、T4 1例で、pN0 31例、N1 16例、N2 6例、N3 7例。これらの症例で免疫染色を行うべく、免疫染色条件の最適化と、一部抗体の作成を施行中である。24基-5:乳癌培養細胞を用いた薬物療法に関する基礎研究:癌幹細胞を標的とした治療戦略の開発研究代表者:紅林 淳一(乳腺甲状腺外科学) エストロゲン受容体 (ER)陽性乳癌細胞におけるエストロゲンや抗エストロゲン薬(AE)の細胞増殖や癌幹細胞(CSC)制御に与える影響を検討した。さらに、mammalian target of rapamycin (mTOR)阻害薬エベロリムス(EVE)とAEとの併用効果も検討した。ER陽性乳癌の実験モデルとして、エストロゲン高感受性(HS)のMCF-7、T-47D乳癌細胞株、エストロゲン低感受性(LS)のKPL-1,KPL-3C乳癌細胞株を用いた。薬剤として、17β-estradiol(E2)、4-hydroxytamoxifen、fulvestrant、EVEを用い、細胞増殖、細胞周期、アポトーシス、CSC比率に与える影響を検討した。CSC同定は、CD44/CD24/EpCAM抗体を用いたフローサイトメトリー法、mammosphere assayを用いた。また、ER関連転写因子の発現は免疫細胞化学的に検討した。その結果、1)LS細胞株では、PgRの発現が認められなかった。それ以外のER関連因子は、HS細胞株、LS細胞株ともに高発現が認められた。2)HS細胞株はLS細胞株に比べ、E2による細胞増殖の促進効果(G1-S移行の促進、アポトーシスの減少)、CSC比率の増加効果が、ともにより顕著であった。3)HS細胞株はLS細胞株に比べ、AEによる細胞増殖の抑制効果、CSC比率の低下効果がより顕著であった。4)EVEとAEの併用は、LS細胞株において相加的な細胞増殖抑制効果を示し、CSC比率の減少効果も増強した。以上から、内分泌療法抵抗性乳癌におけるEVEの有用性が示唆された。S46川 崎 医 学 会 誌

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