川崎医学会誌39-2
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24基-38:口腔癌における細胞骨格蛋白の発現に関する臨床病理学的検討研究代表者:伊禮 功(病理学1) 口腔疣贅性癌は特異的な増殖形態、あるいは生物学的な特性を示し、反応性の白板症、分化型で、微小浸潤を示す扁平上皮癌との鑑別は治療の選択の上でも重要である。本研究は疣贅性癌の外科手術材料を用いて、免疫組織化学的に細胞骨格蛋白(CK13,CK17)の発現状態を確認し、臨床病理学的パラメータとの相関を検討した。腫瘍細胞の細胞骨格蛋白の発現の程度の判定は、通常の高分化型扁平上皮癌の染色性との比較で行った。p53癌抑制遺伝子産物との2重染色を施行し、陽性細胞の局在についても検討した。反応性の白板症では、CK13は強陽性で、CK17は陰性であった。疣贅性癌では、CK13は病期0-Ⅰの7例、Ⅱ期の1例において、有棘層の表層部の一部にのみ斑状に陽性で、CK17は病期Ⅱの1例を除き、ほぼ全例において、有棘層の全層にわたり陽性であった。通常型の扁平上皮癌とは、CK13陽性細胞の局在にわずかに違いはみられるも、CK13.CK17の発現の程度は通常型の扁平上皮癌とは差がみられなかった。p53癌抑制遺伝子産物は疣贅性癌、通常型の扁平上皮癌とも基底層より上数層、微小浸潤部に陽性を示した。 疣贅性癌と通常型の扁平上皮癌との間に、細胞骨格蛋白の発現状態に明らかな差はみられなかったが、反応性の白板症とは区別が可能であった。疣贅性癌では、病期と同蛋白の発現パターンに相関を認めなかった。24基-59:スフィンゴシン-1-リン酸受容体の胃癌の診断・治療への応用研究代表者:秋山 隆(病理学1)【背景】スフィンゴシン-1-リン酸sphingosine-1-phosphate (S1P)は、血管内皮細胞やリンパ球、癌細胞の細胞運動の調節や増殖、生存に関与するlysophospholipidであり、血小板に多量に含まれている。最近S1Pが胃癌に関しても重要な役割を果たしている可能性が報告されているが培養細胞を用いた実験が主体であり、実際のヒトの胃癌症例を用いた研究はない。【方法】当院で切除された進行胃癌症例のホルマリン固定パラフィン包埋切片で免疫染色を実施した。【結果】平成23年度に引き続き、進行胃癌症例を検討した。腫瘍浸潤部の間質の血管増生部位が陽性であった。腫瘍の細胞膜に強陽性所見を示す症例はなかった。低分化型腺癌4例と、肝様細胞癌1例で胞体に弱陽性所見を認めた。【まとめ】平成23年度には胃原発の絨毛癌において細胞膜に強陽性所見を認めたが、本年度は強陽性を示す胃癌症例は確認できなかった。低分化型腺癌の胞体に弱陽性を認めたが、症例数が少なくまた部分像であり有意な結果は得られていない。― 消化器・代謝 ―S39

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