川崎医学会誌39-2
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24基-58:腹膜線維化におけるeNOS-NO経路の役割研究代表者:藤本 壮八(腎臓・高血圧内科学)【背景】腹膜透析(PD)の長期継続は、腹膜の肥厚・線維化、腹膜機能低下を惹起する。腹膜中皮細胞のepithelial-mesenchymal transition(EMT)が、腹膜線維化促進において重要であることが判明している。一方、一酸化窒素(NO)がEMTを抑制的に制御しており、血管内皮障害・NO産生低下が諸臓器の創傷治癒を遅延させることが示されている。【目的】「eNOS-NO経路の破綻が、腹膜EMTを遷延させ腹膜線維化を促進する」との仮説を立てこれを検証した。【方法】eNOS遺伝子欠損マウス(eNOSKO)及び野生型C57/BL6Jマウス(WT)を使用した。これらに腹膜剥離(PF)による腹膜線維化モデルを作成し、対照群には偽手術(sham)を施行した。WT-PF、WT-sham、eNOSKO-PF、eNOSKO-shamの4群(各群n=5-8)を作成し、4週間後に屠殺し評価した。さらにeNOS-NO経路の下流に存在する可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬Bay41-2272を投与し、eNOS-NO経路活性化による腹膜EMT及び線維化過程への効果を検討した。【結果】PF後に腹膜障害部位に腹膜肥厚・細胞増殖・線維化を認めた。eNOSKOでは、腹膜肥厚はさらに増強しており肥厚腹膜組織にvimentin及びαSMA陽性細胞増加を認めた。sGC刺激薬投与は、腹膜EMT及び腹膜線維化を有意に抑制した。【結論】eNOS-NO経路の破綻は腹膜EMT及び腹膜線維化を増悪させた。sGC刺激薬投与は、eNOS/NO経路を活性化し腹膜障害進展を抑制した。24基-64:Klotho蛋白による腹膜機能保護作用のメカニズム解析研究代表者:佐々木 環(腎臓・高血圧内科学) 腹膜中皮細胞の線維形質性形質への形質変換(EMT:epithelial-to-mesenchymal transition)は、腹膜線維化の初期過程において重要な役割を演じている。このEMTにはWntシグナル活性化の関与が明らかになっており、抗老化蛋白であるklotho蛋白はこのWnt活性抑制作用を有する。一方、一酸化窒素(NO)もEMTを抑制的に制御しており、血管内皮障害・NO産生低下が創傷治癒を遅延させる。①klotho蛋白は腹膜線維化過程において、Wnt-signal系抑制により中皮細胞のEMT抑制し腹膜保護的に、②eNOS-NO経路の破綻がは腹膜EMTを遷延させ線維化を促進するとの仮説を立て検証した。Wnt活性レポーターマウス、klotho過剰発現マウス、及びeNOS遺伝子欠損マウス(eNOSKO)を用いて、腹膜中皮細胞剥離による腹膜線維化モデルを作成し検証した。腹膜線維化モデル作成7日後に再生腹膜の中皮細胞にWnt活性化とαSMA産生増加を認めた。14日後では癒着を伴う腹膜線維化、Fibronectinの増加を認めた。これら障害作成後の経時的変化はklotho過剰発現マウスではその抑制が観察された。eNOSKOでは、腹膜肥厚はさらに増強しており肥厚組織にvimentin及びαSMA陽性細胞増加を認めた。sGC刺激薬投与は腹膜EMT及び線維化を有意に抑制した。S37

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