川崎医学会誌39-2
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24基-44: キャピリアMAC抗体ELISAキットのMycobacterium avium complex(MAC)感染症の診断精度に影響を及ぼす因子に関する検討と予後因子としての評価研究代表者:小橋 吉博(呼吸器内科学)【目的】2011年に商品化されたキャピリアMAC抗体ELISA法がMAC感染症に対する補助的診断法としての評価とその診断精度に影響を及ぼす因子、経時的測定によりMAC感染症の治療効果判定や疾患の予後との関連性がないか検討した。【対象と方法】MAC感染症と確定診断された99例、MAC感染症疑い53例、その他の疾患70例を対象とした。これらの症例全例にキャピリアMAC抗体ELISAを測定した。次に、確定診断例で2回以上の複数回測定しえた49例に対して、経時的推移と治療効果判定に有効かも検討した。【結果】本検査のMAC感染症に対する感度は78%、特異度は99%と比較的優れた成績が得られていた。MAC感染症確定診断例99例中22例が偽陰性を呈していたが、これらの症例は陽性を呈した症例に対して何らかの基礎疾患を有していた症例に多くみられていたものの、その他の臨床所見では有意差がみられなかった。抗体価の経時的推移に関しては、治療でき有効であった16例で低下する傾向がみられたが、陰転化した症例は2例しかなかった。一方、無治療で悪化する症例に対しては上昇する傾向がみられた。【考察】本検査は感度において何らかの基礎疾患を有する症例で偽陰性を呈する問題点もみられたが、MAC感染症と他の呼吸器疾患を鑑別するには有用と思われた。経時的推移に関しては、有効例が治療に伴い低下する傾向はみられたが、治療効果に相関しない症例も少数例あった。また、治癒の効果判定に関しても正常化は少数しかなく、難しいと思われた。24基-50:超音波造影剤(ソナゾイド)を用いた脳梗塞に関与する頸動脈粥腫病変の評価研究代表者:松本 典子(脳卒中医学)<背景>プラーク内新生血管がプラークの不安定化に関与すると推察されている。従来の頸部血管エコー検査ではその評価は困難であったが、超音波造影剤を用いた頸部血管エコー検査(Contrast-enhanced sonography:CEUS)により、プラーク内新生血管の評価が可能であることが報告されている。<目的>頸動脈内膜剥離術(Carotid endarterectomy:CEA)施行例に術前にCEUSを行い、超音波所見と病理学的所見について検討する。<方法>脳神経外科においてCEAを施行した18例(男性16例、年齢69.4±6.7歳)を対象とした。超音波造影剤は、ソナゾイド0.016mL/kgを静注後、狭窄部位を観察した。CEAにて得られたプラークは3mm幅で病理切片を作成し、HE染色、免疫染色(CD31、CD68)を行った。<結果>18例中11例(61.1%)でプラークの造影所見を認めた。造影所見を認めた11例中5例では、点状の造影効果(Spotty group)を、残る6例は血管内腔側より線状あるいは点状に造影剤が流入する造影所見を認めた(Liner group)。造影効果を認めた11例では、認めなかった7例と比べて、プラーク内新生血管の増生(6.79±5.17/2.5mm2 vs. 1.12±0.90/2.5mm2、p=0.001)、マクロファージの集族(7.76±3.70% vs. 4.23±1.63%、p=0.030)を認めた。さらに、Liner groupでは、プラークのFibrous cap(FC)の破綻が、Spotty groupよりも高率であった(100% vs. 20%、p=0.015)。<結語>ソナゾイドによるプラークの造影所見は、新生血管増生、プラーク内出血、FCの非薄化・破綻、マクロファージの集族と関連していた。CEUSは頸動脈プラークの質的診断に有用である。― 臨床 ―S16川 崎 医 学 会 誌

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